■はじめに
ご存じの方も多いと思いますが、WEC/WinCE には、日本語入力の IME (Input Method Editor) が付属しています。WEC 7 ですと、Platform Builder の Catalog Items View で次のカタログ項目を選択して OS Design をビルドすることにより、日本語 IME 3.1 が OS イメージに組み込まれます。
Core OS
International
Language
Japanese
Input Method Editor (Choose 1)
★ IME 3.1
日本語入力用の IME として、IME 3.1 に加えて Pocket IME 2.0 も付属しており、Catalog Items View には、IME 3.1 と同じ階層に表示されます。今回は、Pocket IME ではなく、IME についての tips を紹介します。
■IME の初期入力モードの設定
IME の入力モードは、IME ツールバーの入力モードアイコンをクリックして表示されるポップアップメニューで変更できます。これは、WinXP/Vista/Windows 7 と同様です。ただし、WEC/WinCE 付属の IME では、プロパティダイアログで初期入力モードを設定することができません。初期入力モードは、レジストリでのみ設定可能なようです。
IME のレジストリ設定項目は、リファレンスの次のページで説明されています:
Japanese IME 3.1 Registry Settings (Windows Embedded Compact 7)
http://msdn.microsoft.com/en-us/library/ee491573.aspx
Japanese IME 3.1 Registry Settings (Windows Embedded CE 6.0)
http://msdn.microsoft.com/en-US/library/ee491573(v=winembedded.60).aspx
なお、WinCE 6.0 の方のリファレンスには、”Japanese IME 3.1 Architecture” というページや、”Japanese IME 3.1 Customizable User Interface” というセクションがあり、IME のカスタマイズを行う際に必要となる情報が記載されています。興味のある方は、そちらも御覧になってみて下さい。
さて、初期入力モードを設定するレジストリ項目は、上のページで説明されている、HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\Microsoft\IMEJP\3.1\MSIME キーの下の option3 です。この値は、デフォルトでは「ひらがな」入力モードになっています。これを変更して、たとえば「半角英数」入力モードにしたい場合は、0×0000000C を指定します。ただし、0×0000000C そのものを設定すると、「かな入力」になってしまいます。「ローマ字入力」にしたい場合は(※上のページに説明がある通り、デフォルトは「ローマ字入力です)、ローマ字入力を指定する 0×00000001 と組み合わせた値(論理 OR 結合した値)の 0×0000000D を指定して下さい。
つまり、OS Design のレジストリ設定ファイル(OSDesign.reg や project.reg)に次の行を追加して OS イメージをビルドすると、日本語 IME の初期入力モードが「半角英数」になります。
[HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\Microsoft\IMEJP\3.1\MSIME]
"option3"=dword:0000000D
■ソフトウェアキーボードの設定
次に、ソフトウェアキーボード(Software-based Input Panel; SIP)に関する tips です。デフォルトの振る舞いでは、エディットフィールドなど、テキスト入力の GUI 部品にフォーカスが当たると、自動的に SIP が表示されますが、WEC 7 では、この振る舞いを変更できます。
WEC 7 の SIP のレジストリ設定項目のリファレンスは、次のページです:
Input Panel Registry Settings (Windows Embedded Compact 7)
http://msdn.microsoft.com/en-us/library/ee504097.aspx
このページにある HKEY_CURRENT_USER\ControlPanel\SIP キーの説明を見て下さい。TurnOffAutoDeploy という値を 1 にすると、SIP が自動的に表示されない(are not auto deployed)と書かれています。実際、OSDesign.reg に次の行を追加して OS イメージをビルドすると、SIP が自動表示されません:
[HKEY_CURRENT_USER\ControlPanel\Sip]
"TurnOffAutoDeploy"=dword:1
注意:リファレンスでは、キーの名前は ‘HKEY_CURRENT_USER\ControlPanel\SIP’ となっていますが、実際は、上の設定例のように、末尾は ‘Sip’ (先頭のみ大文字)が正しいようです。WINCE700\public\COMMON\oak\files/common.reg の記述を見ても、そうなっています。
なお、WinCE 6.0 のリファレンスを見ると、HKEY_CURRENT_USER\ControlPanel\SIP キーに TurnOffAutoDeploy という値がありません:
Input Panel Registry Settings (Windows Embedded CE 6.0)
http://msdn.microsoft.com/en-US/library/ee504097(v=winembedded.60).aspx
WinCE 6.0 の OS Design に上記の TurnOffAutoDeploy の設定を追加して OS イメージをビルドしてみても、SIP が自動表示される動作は変わりません。つまり、WinCE 6.0 までは undocumented だったが実は使えた、という機能ではなく、WEC 7 になって初めて使えるようになった機能のようです。
しかし、Windows Mobile では、TurnOffAutoDeploy の設定が有効だったようで、’TurnOffAutoDeploy’ で Web を検索すると、Windows Mobile の tips として紹介しているページがヒットします。たとえば、次のページです。
How To Stop Your SIP From Automatically Popping Up
http://pocketnow.com/tweaks-hacks/how-to-stop-your-sip-from-automatically-popping-up
Windows Mobile Registry Tricks
http://www.ehow.com/list_7200029_windows-mobile-registry-tricks.html
Windows Mobile(6.x)のカーネルは WinCE 5.0 だったようですから、念のためにと思い、WinCE 5.0 のリファレンスも見てみましたが、WinCE 6.0 と同様、TurnOffAutoDeploy の記述は、ありません:
Input Panel Registry Settings (Windows CE 5.0)
http://msdn.microsoft.com/en-us/library/aa452674.aspx
真相は分かりませんが、Windows Mobile でのみ提供されていた機能が、ユーザや開発者からの要望により WEC 7 にも追加された、ということなのかも知れません。